神宮大麻について

伊勢の神宮の御神札(おふだ)である「神宮大麻(じんぐうたいま)」について詳しく解説します。
 【 神社本庁(平成10年/1998)『神宮大麻・暦についてのQ&A』から引用 】

Q.1 「お伊勢さまのお神札」はいつ頃からおまつりされていたのですか?

A.1 いつ頃からおまつりされていたかは定かではありません。しかし、史書によれば平安時代の末には神宮の御師(おんし)達が、全国各地でお祓いを行い祈祷をしていたことがわかっています。そして御師達は祈祷をした「しるし」として「御祓(おはらい)」を配布していました。
 その「しるし」(「御祓」)を人々が鄭重におまつりし、「お伊勢さま」を遥かに拝して信仰を深めていました。
 また、記録によれば、既に江戸時代中期には日本全国の世帯数の約九割が大麻を受けていたと推測されており、「お伊勢さま」「太神宮(だいじんぐう)さま」として広く全国から篤い崇敬を集めて、宮中を始め、諸大名はもとより広く庶民に至るまで、「御祓」を日々おまつりしていました。
 「御祓」は一般には「お祓(はらい)さん」と呼ばれ、その形状により、剣先の形をした「剣御祓」とよばれるものや、箱型の「千度祓」或は「万度祓」と呼ばれるものがあり、その包み紙には、その祓を行った度(回)数と御師の名前(「○○神主」・「○○大夫(たゆう)」)も記されていました。

Q.2 「御師」とはどのような人のことですか?

A.2 御師とは、古来より神宮に仕えた人々で、「御詔刀(のりと)師」・「御祈祷師」、または「御師匠」の語の略称とも言はれており、一般的には親しみを込めて「太夫さん」とも呼ばれていました。
 御師たちは全国各地へ赴き、「檀那(だんな)」や「壇家(だんか)」と呼ばれた崇敬者の求めに応じてお祓いを行い祈祷をし、その祈祷をした「しるし」として「御祓(おはらい)」を配布していました。
 また、壇家の参宮に際してはその便宜をはかり、自邸では太々神楽(だいだいかぐら)とよばれる神楽を奏行して祈祷を行い、参宮者への饗応や宿泊等の手配もしていました。

Q.3 なぜ、神職や総代等が頒布をするのですか?

A.3 明治4年、それまで各御師により奉製され、配布されていた「御祓大麻」は廃止されました。そして、翌明治5年より新たに「神宮大麻」として、神宮司庁より全国の家庭に頒布されるようになりました。
 これは明治天皇の聖旨によるもので、明治5年4月に皇大神宮の中重(なかのえ)で執り行はれた「神宮大麻御璽奉行式」において、時の北小路大宮司が奏上した祝詞に、
(前略)天皇乃大命以弖天乃益人等尓朝尓夕尓皇大御神乃大前乎慎敬比拝給布止為弖自今年始弖畏支大御璽乎天下乃人民乃家々尓漏落留事無久頒給波牟止須(後略) 「神宮大麻御璽奉行式祝詞」とあります。
 当初、奉製は神宮司庁で行い、その頒布は各府県庁に委託されていました。
 しかしその後、頒布については、神宮教院・神道事務局を経て、明治32年からは神宮奉斎会、同45年からは神宮神部署、さらに、昭和2年からは全国神職会(後に大日本神祇会)に委ねられていました。
 そして終戦後、昭和21年からは、設立間もない神社本庁に、その頒布を委託戴いて今日に至っております。その経緯や当時の事については、次の資料等から窺うことが出来ます。
 21年5月9日附本庁21財発11号「神宮大麻頒布受託ノ件」として、時の宮川宗徳神社本庁事務総長より、高倉篤麿神宮大宮司に提出されております。
  貴廳御奉製ノ神宮大麻ハ従来各地方ノ神職團体又ハ行政廳ニ御委嘱ノ上御頒布相成居候處當廳ハ神宮大麻奉斎ノ普及徹底ヲ期シ度(中略)就テハ本年度以降右頒布ハ之ヲ一括シテ当廳ニ御委嘱ノ儀(中略)相成様特別ノ御詮議相煩度此段得貴意候也 「神宮大麻頒布受託ノ件」
 神社本庁が設立されて僅か三ヶ月の時点で、当時の斯界の総意として、神宮大麻の頒布についての「御委嘱」を願い出ています。
 また、同年7月5日には、6月27、28日の両日に開催された第一回地方神社廳長会議に於て、満場一致で議決された「神宮大麻並暦頒布二關スル意見具申書」が、時の鷹司信輔神社本廳統理より、高倉篤麿神宮大宮司に提出されています。
 神宮大麻並暦頒布ニ關スル意見具申書
 神宮大麻並暦ノ頒布ハ其ノ制ヲ定メラレシ御趣旨ニ鑑ミルモ極メテ重要ナル事柄ニテ之カ頒布ノ方法如何ハ直チニ神宮ノ尊崇ニ至大ノ關係ヲ有スルハ勿論國民精神ニ及ホス影響モ極メテ多大ナルモノ有之ト存候殊ニ終戦ニ伴フ國民思想ノ動揺ニ乗シ種々奇矯過激ナル言論行ハレ動モスレハ國體ニ對スル國民ノ信念ニ罅ヲ生シ神宮崇敬ノ精神ヲ稀薄ナラシムル虞ナキヲ保シ難キ現下ノ社會情勢ニ於テハ頒布上特ニ慎重ヲ期シ適切ナル方法ヲ講スル要有之ヘク従ツテ頒布ニ従事スル者ニ就テモ特ニ之ヲ嚴選セラルルハ勿論其ノ實施ニ當リテハ豫メ確乎タル方針ヲ樹立シ置カルヘキ儀卜存候 就テハ従来全國各道府県神祇會ヲシテ行ハシメラレタル實績ニ徴シ此際神社本廳ヲ頒布ノ責任者卜定メ必ス本廳所属神社ノ神職ヲシテ右頒布ノ衝ニ當ラシメラルル様致度萬一頒布従事者ヲ本廳所属神職以外ノ者タラシムル等ノコトアリテ頒布者ノ統制ヲ欠キ其ノ取扱區々ニ亘リ爲ニ忌ハシキ問題ヲ惹起スルカ如キコト有之ンカ洵ニ由々シキ大事ト相成ルヘキニ付特ニ御留意ノ上然ルヘク御高配賜り度茲二第一回地方神社廳長會議ノ決議ニ基キ此段意見具申候也
 昭和二十一年六月二十八日 全國神社廳長會議議長 神社本廳統理 公爵 鷹司信輔
 神宮大宮司 子爵 高倉篤麿閣下
 また、当時の「神社新報」の「社説」には、「神宮大麻頒布について」と題し、
 (略)この際考うべきは、もと神宮は我國民一般の仰ぐ神宮であって一宗一派の私すべきものに非ず、神宮大麻は明治天皇の思召にもありし如く、苟くも拝戴を希望する者には洩れなくこれを頒布すべき性質のものだということである。本廳としては当然この本旨に則り、如何なる宗派に所属する者であろうとも、均しくこれを頒布するのであって、その間差別的取扱いの如きは毫も考えられないのである。(略) 「神社新報」昭和21年10月7日号
と記しています。
 以来、神社本庁は、各神社庁の支部、神社を通じて、神職や氏子総代をはじめとした神社関係者の協力を得て、全国の家庭のみならず、店舗・会社に至るまで隈無く頒布すべく、全国的運動を展開しています。
 それぞれの地域にまつられる神社は古くから地域の中心として、氏子崇敬者の人々にとっては大切な「心のよりどころ」です。
 その神社に奉仕する私たち神職は、代々、その大前に日々、皇室の繁栄と国家の隆昌、氏子の安寧を祈ってきました。
 戦後の混乱期、疲弊した日本の立て直しのため、「神宮大麻」を通じて皇祖神であり日本人の大御祖神・総氏神さまである天照大御神さまを拝し、天皇陛下を中心とした私たちの祖国「日本」を再建すべく、逸早く斯界の先達が「神宮大麻」の頒布の「御委嘱」を願い出ました。
 その心を受け継ぎ、総代をはじめとする頒布従事者の協力を得て、年ごとに全国の家庭に遍く「神宮大麻」を頒布することが、全国の人々の心がお伊勢さまと結び合わされ、日々、天照大御神さまの恩頼を戴いて安じて生活にいそしみ、日本人としての自覚に満ちた家庭を築いてゆくこととなり、それは全国神社の基幹を支え、ひいては、天照大御神さまの御神徳の更なる宣揚につながります。ここに神社を通じた神宮奉賛の心があります。

Q.4 氏神さまの御祭神が天照大神さまなのですが、神棚には「氏神さまのお神札」と共に、「神宮大麻」もおまつりしなくてはいけませんか?

A.4 もちろんです。全国の氏神さまで、○○大神宮や神明・伊勢・天祖神社等の社名をもち、天照大神さまをおまつりしている神社は多数あります。
 神社本庁が平成御大典記念事業で実施した『全国神社祭祀祭礼総合調査』には、境内神社を含めて神社は118,001件(社)、祭神は246,208件(座)の基礎情報があります。
 それによれば、神社名に「神明・伊勢・天祖・天照」が含まれるものは5,431社、祭神名で「天照大神(異なった表記を含め)」は13,427座が日本全国におまつりされていることがわかっています。
 しかし、同じ神さまであっても、それぞれのお社で鎮座の由緒が異なるように、それぞれ神格を異にします。氏神さまは私たちの住んでいるそれぞれの地域をお守り下さり、広く日本をお守り下さっているのが「お伊勢さま」なのです。
 「神宮大麻」は、皇室の御祖神さまであり、私たち日本人の大御祖神さまにして、総氏神さまである天照大御神さまをおまつりしている「伊勢の神宮のお神札」です。
 地域の氏神さまとして天照大神さまをおまつりされるようになった神社の多くは、皆さんの御先祖にあたられる方々、また今後もその土地で子孫が日々の生活をしてゆく上において、遥かに日本人の大御祖神・総氏神さまである伊勢の神宮を拝するために建立されたものです。天照大神さまをおまつりされている神社の氏子の方こそ、率先して「神宮大麻」をおまつりし、神宮への奉賛につとめましょう。
 それぞれの地域に住まう者として「氏神さまのお神札」を、日本人として「伊勢の神宮のお神札」をおまつりしましょう。

Q.5 「大御璽(おおみしるし)」について教えて下さい。

A.5 神社本庁「神宮大麻及び神宮暦頒布取扱要綱」の中に、
 (大麻の本質)
 第二条 大麻は、天照皇大神の大御稜威をあまねく光被せしめる大御璽として、希望する者に頒布する。これを毎年頒布するのは、御恩頼の更新累加を意味するものである。
と記しています。
 この「大御璽」とは、私たち国民一人一人が、天照大御神さまの大御恵を戴くための象徴(みしるし)です。
 つまり、「大御璽」とは天照大御神さまの「御神徳・御神威の象徴」と言うことです。
 「神宮大麻」はいうなれば、私たち日本人の大御祖神・総氏神さまである天照大御神さまが、常に私たちと共におわします「みしるし」といふ意味です。

Q.6 神宮大麻の「大麻」とはどのような意味があるのですか?

A.6 明治4年の神宮改正以後、大麻を「たいま」と音読するようになりましたが、本来は「おおぬさ」と読んでいました。
 「大麻」とは、
 「大」=麻に対する尊称と美称の意。
 「麻」=神さまへの捧げものである幣帛の意。お祓いの際に罪機を蹟ふために差し出す贖物の意。
と、考えられています。
 本居宣長の『古事記伝』には、「奴佐」の説明として、
 奴佐(ぬさ)は、神に手向る物をも云、又祓に出す物をも云、名義は、祷布佐にて、事を乞祷ぐとて出すよしなり、祓の奴佐も、其の罪機を除清め給へと祷ぐ意を以て出すなれば、神に献りて祷ぐと、意ばヘ一なり、さて布佐は麻なり、(後略) と記されています。
 また、神社へ参拝した際、修祓(お祓い)の時に、参拝者の頭上で左右左と振られる修祓具も「大麻(おおぬさ)」と呼ばれています。
 「神宮大麻」の中心である「御真(ぎょしん)」は麻串の形状をしています。
 御師たちは諸国の檀那廻りに際して人々の求めにより祈祷し、用いた「祓串」を配布していました。その「祓串」を当時の人々は「お祓いさん」と呼び、これを通じて日々祈りを大御神さまに捧げていました。
 また、明治天皇の御聖慮により、私たち日本人の大御祖神・総氏神さまである「お伊勢さまのお神札」として全国に頒布されている神宮大麻を、現在でも「お祓いさん」という昔からの通称で呼ばれる方がいます。
 「大麻」とは、祈祷が「おはらい(修祓)」を行うことに始まり、これにより「清浄」な状態がもたらされるといふことから、本来は「祓の具」である「大麻」という語句を転じて用いられたもので、これは「清浄」「正直」を尊ぶ「伊勢神道」の祓い清めの信仰に根ざして生まれた名称であることがわかります。
 昔から「正直者の頭(こうべ)に神宿る」と言われるように、神さまは「清浄」「正直」ということを何よりも尊ばれます。清浄(正直)であればこそ、神さまが宿られるのです。
 「神宮大麻」には、古来より常に「清浄」と「正直」を旨とする「日本人の心」があらわれています。

Q.7 「神宮大麻」に別の呼び方はありますか?

A.7 「神宮大麻」という正式名称の他、一般には下の呼ばれ方があります。
 このように呼ばれるのは、それぞれ以下の理由によることが推測されます。
 「お伊勢さま」=神宮の御鎮座される旧国名から。
 「太神宮さま」=神宮の旧来からの尊称から。
 「天照大御神さま」=御神名から。
 「お正月さま」=頒布される時期が年末であり、その頒布の情景からもお正月が来たことを実感出来ることから、これが転じたもの。
 「歳神さま」=頒布される時期が年末であり、天照大御神を年の初めに各家々に訪れるという「歳神さま」と見なした「歳神信仰」に根ざしたもの。
 「お祓いさま」=御師たちが全国に頒布していた「御(お)祓(はらい)」の通称の名残。
 「お万度さま」=極鄭重な「御祓」の通称の名残。
 上は何れも伝統的に呼び習わされているもので、地方色も見受けられます。
 これらの呼び方には、私たち日本人の大御神さまへの尊崇と親しみの念が込められています。
 それぞれに歴史と意義があり、今後も大切に守り伝えて行きたいものです。

Q.8 なぜ、お正月にお神札を新しくするのですか?

A.8 新年にお神札を取り換えることは、年の初めにあたり、新しいお神札で神さまをおまつりすることにより、更なる御神威の発揚を願い、より一層の御神徳を戴くためです。
 日本の家庭では、昔から新年を迎えるにあたり、氏神さまから毎年新しくお神札を受け、新しい年の家族の幸福を祈ってきました。
 「神宮大麻及び神宮暦頒布取扱要綱」にも「これを毎年頒布するのは、御恩頼の更新累加を意味するものである。」と明記されています。
 また、古い「お神札」や「お守り」は今年一年を無事に過ごせたことに感謝し、氏神さまに納めます。そして、氏神さまでは「左義長」・「ドンド焼き」行事等で、それらの納められたお神札を清浄な火で鄭重に焼納します。
 お正月には、新しい氏神さまのお神札と、伊勢の神宮のお神札をおまっりし、清々しく、素晴らしい新年を迎えましょう。

Q.9 神宮の神楽殿で授与しているお神札と、年末年始に氏神さまを通じて頒布される「神宮大麻」とでは、どのような違いがあるのですか?

A.9 神宮の神楽殿で授与している授与大麻は「角祓(かくばらい)」や「剣祓(けんばらい)」と呼ばれるもので、神宮へお参りした際の感激と喜びに広大無辺の御神徳を仰ぐ心映えをもって拝戴を希望する人々に授与されます。また、「神楽(かぐら)大麻」・「御饌(みけ)大麻」は、大御神さまに大々御神楽や御饌を奉納した際に拝受するものです。
 大々神楽の奉奏は、最も鄭重を期した神宮参拝の儀式で皆様が広大無辺の御神徳を仰ぎ、至誠を捧げられまして大御代の弥栄を祝祷し奉るものであります。
 この大麻(神札)は、さらにあなたの願意をこめましてご祈願をいたした大御璽であります。 「神楽大麻授与趣意書」
 一方、「神宮大麻」は、「朝に夕に皇大御神の大前を慎み敬い拝がましめ給う」という明治天皇の聖旨により、各氏神さまを通じて全国の家庭に遍く頒布される「大御璽」で、その拝戴の趣を異にします。
 実際に、「授与大麻」の奉製に際して、その修祓式で奏上される祝詞文に
 (前略)崇敬者等賀大宮爾参詣弖弖高久尊伎大御稜威乎仰奉利広久厚伎大御恵乎辱奉利弖請奉留任爾授与布留大麻(後略) 「修祓式祝詞文(授与大麻)」
とあり、奉製の時点からもその拝戴の趣旨が違うことがわかります。
 ですから、これらの授与大麻の「角祓」や「剣祓」、「神楽大麻」や「御饌大麻」は、年末に頒布される「神宮大麻」と共に家庭の神棚におまつりして、いっそう更なる恩頼を仰ぎ奉りましょう。

Q.10 神宮大麻はどこで奉製されているのですか?

A.10 「神宮大麻」は、伊勢の神宮司庁頒布部の奉製所で、一体一体鄭重に奉製されています。
 奉製は清浄を第一とし、奉製員は毎朝先ず潔斎をして身を清め、白衣に着替え、一同揃って神宮を遥拝してから奉製に取りかかります。
 清浄を期して鄭重に奉製され、奉製所内の奉安所に移されて修祓式を待ちます。厳粛な「大麻修祓式」の後、「神宮大麻」は箱へおさめられ、全国の神社庁から神社を通じ、皆さんの家庭や会社に頒布されます。

Q.11 神宮大麻が奉製されるまでには、神宮で何度もおまつりが執り行われるとのことですが、それらについて教えて下さい。

A.11 「神宮大麻」は神宮で、次のような祭儀を重ねて鄭重に奉製されます。
 そして、全国の神社庁・支部・神社でもそれぞれおまつりが行われ、各家庭へ頒布されているのです。

 奉製の諸祭
 大麻暦奉製始祭(1月8日)
 年頭に当たり、今年の大麻と暦の奉製を始めることを大御前に奉告します。
 禰宜以下の神職が奉仕し、大宮司以下、大麻・暦の奉製に携わる奉製員等が参列します。
 参龍潔斎をし、斎服を著した禰宜が案前に進み、今年一年間に奉製する大麻の第一号目となる大麻に、謹んで神璽を押捺します。
 大麻用材伐始祭(4月中旬)
 大麻の御用材を伐り始めるにあたり、宇治橋にほど近い丸山祭場で行われ、「大宮山の木木の木本に坐す大神」をおまつりします。
 禰宜以下神職が奉仕し、侍(さむらい)烏帽子に素襖(すおう)を著した工匠が忌斧をふるって「伐始(きりはじめ)の儀」を行います。
 また、忌物として五色の薄絁(うすぎぬ)、木綿、鉄の人像・鏡・鉾等もお供えされます。
 大麻暦奉製終了祭(12月20日)
 年末に当たり、今年の大麻と暦の奉製が無事終了したことを、慎しんで大御前に奉告します。禰宜以下の神職が奉仕し、大宮司以下、大麻・暦の奉製に携はる奉製員等が参列します。
 大麻修祓式(毎週1回)
 前夜から斎館に参龍潔斎をした禰宜、権禰宜各一員、宮掌二員、出仕一員が奉仕して執り行われます。
 時刻禰宜以下参進祭場ノ版ニ著ク
 次ニ修祓
 次ニ権禰宜神饌ヲ供シ神酒ヲ奠ス
 次ニ禰宜祝詞ヲ奏ス
 (前略)此乃大麻爾稜威乃神霊乎幸給比弖家毎爾斎奉利(中略)朝爾夕爾大御稜威乎仰奉利拝奉留諸人爾広久厚伎恩頼乎蒙良志米給比弖家爾毛身爾毛八十禍津日乃禍事無久(後略) 「大麻修祓式祝詞文」
 次ニ諸員奉拝八度拍手両端
 次ニ禰宜祓ヲ修シ大麻ヲ祓清ム
 次ニ権禰宜神饌ヲ撤ス
 次ニ諸員退下
 このように清浄を期して、奉製された「神宮大麻」は、各神社庁へ奉送されるまで、神宮で鄭重に奉安されます。

 頒布の諸祭
神宮大麻暦頒布始祭(9月17日)
 今年の大麻と暦の頒布を始めることを大御前に奉告します。
 内宮神楽殿で、神社本庁統理以下の役職員、各都道府県神社庁長や各県の支部長代表者が参列の中、大宮司以下の神職の奉仕によって斎行され、白木の箱に納められた代表の大麻と暦が大宮司より統理に授与されます。
 大宮司以下神職退出の後、統理より各県の代表大麻と暦が、各神社庁長に頒たれます。
 (前略)年毎乃例乃任爾家毎爾斎奉留大御璽乃大麻及平成○○年乃暦乎今年毛明治天皇乃定給比掟給倍留大御旨乎畏奉利弖十月乃一日与利始米弖天下四方乃国乃崇敬者等爾頒布良牟登為留(後略) 「神宮大麻暦頒布始祭祝詞文」
 またこの後全国各地では、これを拝受した各都道府県の神社庁においても、庁長以下の役職員、管内の神職や頒布従事者等が参列し、「神宮大麻暦頒布始奉告祭」が斎行されます。
 それを受けた各支部や、また各神社においても氏子総代や頒布従事者等が参列し、厳粛に祭儀が重ねられて、全国の家庭をはじめ会社・店舗などへ頒布がされます。
  神宮大麻暦頒布終了祭(3月1日)
 今年の大麻と暦の頒布が滞りなく終了したことを大御前に奉告します。
 内宮神楽殿で、神社本庁統理以下の役職員、各都道府県神社庁の役職員が参列の中、大宮司以下、神職の奉仕によって斎行されます。
 また、この3月1日より前には各神社や支部、神社庁においても、庁長以下の役職員、管内の神職や氏子総代・頒布従事者等が参列し、「神宮大麻暦頒布終了奉告祭」が斎行されています。

Q.12 神宮大麻には「大大麻」・「中大麻」・「大麻」の三種類がありますが、大きさにより御神威は異なるのですか?

A.12 お神札の大きさにより、その御神威(お力)が異なることはありません。何よりも大切なことは、日々「おまつりをする心」です。
 「大大麻」・「中大麻」・「大麻」の三種類はそれぞれ初穂料が異なり、皆さんの奉賛のお気持ちによりそれぞれお受け戴けます。
 神は人の敬いによって、その威を増す。
 人は神の徳によって、その運を添ふ
『御成敗式目』(貞永式目)第一条 鎌倉幕府執権北条泰時等編

Q.13 「初穂料」について教えて下さい。

A.13 我が国では古くから、毎年秋になると、収穫された「お初穂」をまず氏神さまにお供えして、その年の収穫に感謝しました。同様に、伊勢の神宮へもお供えして収穫を感謝し、「神宮大麻」を戴き、新しい年の家族の幸福を祈ってきました。
 お預かりした「神宮大麻」の「初穂料」は、氏神さまから神社庁を通じて、私たち日本人の大御祖神・総氏神さまである天照大御神さまをおまつりする伊勢の神宮にお納めします。

Q.14 神宮大麻のおまつりの仕方について教えて下さい。

A.14 「神宮大麻」は、全国の神社を通じて各家庭をはじめ商店や会社・工場等へ頒布されます。
 頒布については、神職が行うところと、神社の総代や世話人等が行うところがありますが、何れも頒布従事者として神社から、更には伊勢の神宮から託された重要な奉務であることを常に心して鄭重に行われています。
 「神宮大麻」をお受けする時は清浄を心掛け、折敷・お盆や袱紗の上に神宮への「初穂料」をのせてお渡しし、「神宮大麻」と「神宮暦」をお受けしましょう。
 尚、神棚におさめる時には、「神宮大麻」を包んでいる「薄紙」は取り除きましょう。「神宮大麻」はその奉製から頒布に至るまで「清浄」を第一に、それぞれのお祭りを重ねて、鄭重なお取り扱いがなされています。大麻の上包みとして、一体一体に施されている「花菱」紋様が透かし入りされている「薄紙」は、各家庭に「神宮大麻」が届くまでに汚れないようにするためのものです。
 また、神棚は「家庭の中心」であり、常に「清浄」な状態を心掛けることが肝要です。特に新しい年を迎えるに当たっては鄭重にお掃除をします。そして、家族揃って清々しい心で新年をお迎えし、「氏神さま」と共に「お伊勢さま」をおまいりし、今年一年の無事をお祈りしましょう。
 「神宮大麻」と「氏神さまのお神札」は、『神宮大麻頒布趣意書』等の「お神札のまつり方」を参考にしておまつり下さい。

「お神札のまつり方」
 神棚は明るく清らかなところで、目の高さよりは少し上におまつりします。お神札が南か東に向くのが一般的ですが、家の間取りによってはおまつりするのにふさわしい場所であれば良いでしょう。
 神棚がない家庭では、とりあえずタンスや書棚の上を拭き清め白い紙を敷くなどしておまつりして頂くのも良いでしょう(尚、出来るだけ早く神棚を設けておまつりしましょう。)
 【お供え】
 神棚には毎朝、お米、お塩、お水などをお供えして拝礼します。
 御神酒、季節の初物、お土産等は、その都度お供えし、感謝をこめて、のちほど頂戴します。
 【お参りの作法】
 神社の参拝作法と同様に、
 二拝(深くお辞儀を二回)、二拍手(手を二回たたく)、一拝(深くお辞儀を一回)です。 『神宮大麻頒布趣意書』

Q.15 忌中には、神宮大麻をお受け出来ないのですか?

A.15 一般的に忌中は、神棚の前に白紙を張り、一定期間は神棚まつりを慎みます。
 その期間は地方によってそれぞれ慣習が異なり、全国一定のものではありません。
 一所に生活(同居)している家族の方が亡くなられた場合は、五十日祭(仏式では49日[7・7日])後、神社の神職に「清祓」をお願いして平常の生活に戻り、神棚のまつりも再開します。
 その間に、「神宮大麻」や「氏神さまのお神札」が頒布される場合は、忌み明けまで神社にお預けして、忌みが明けてからおまつりしましょう。